※この作品は性描写があります。18歳未満の方はお戻り下さい。
18歳以上の方は自己責任でご閲覧下さい。
じりじりと焼け付くような太陽の光、むせ返るような暑さ。
ひぐらしの音色に沈んだその場所は、時が止まったような感覚を訪れる者に与える。
線香の匂い、けぶる草の香り。
「......来ていたか」
背後に佇む気配に気付き、桂は墓標に向き合ったまま静かに口を開いた。
「クク...てめェもか」
喉の奥で笑い、高杉はゆっくりと桂の横に屈みこむ。
墓前にそっと花を手向け、普段の激しさからは想像もつかぬ敬虔な表情で手を合わせる。獣のようなこの男も、師には驚くほど忠孝であった。
師の墓標の前に並び、静かに祈りを捧げる二人。その胸にあるのは、願いか、誓いか。
互いの思想的な違いなど、この場所では意味を成さない。
道を別ちつつある二人の教え仔を、墓標がそっと見守る。
長い沈黙の後、桂は横に置いた笠を手に取りすいと立ち上がった。
「...今夜の宿は?」
跪いたまま、高杉が独り言のように問う。
「...四つ角、紅い看板」
桂もまた独り言のように答える。
そして会話などなかったかのように笠を被り、桂はその場を立ち去っていく。
口になどは、決してしない。
たとえ道が離れつつあろうとも、互いに、恋しくてしかたのないことなど。
「っ、は、」
脚を互いに絡ませ合い、うねるように重なる肢体。
「んっ、ふ...ぁっ」
身体をくねらせて息を乱す桂と、その身体を無心に貪る高杉と。
仰け反る白い喉に、首筋に、胸元に、ねっとりと舌を押し当てて。
じっとりと頬を辿る掌、絡み押し付けあう互いの熱。
「は、は...」
上がる吐息、汗ばむ胸元、絡む脚、交わる唾液。
「ぅ、っん...ッ、っ」
ゆっくりと身体を繋ぎ、素肌を抱き合い、舌を絡め、融かし合い。
「っ、んぁ、あ、」
なるべく長く繋がっていられるよう、緩慢な動きを繰り返し、時を忘れて交わり続ける。
互いの道が離れていくことをどこかで感じていながらも、その不安を拭い去るかの如く。
「夜は明けた...、離せ」
静かに目を開けた桂の言葉に、無言で身体を引く高杉。
短い沈黙の後、桂は着物を手に取りすいと立ち上がった。
「...雲行きは?」
横になったまま、高杉が独り言のように問う。
「...雨が来る」
桂もまた独り言のように答える。
そして何事もなかったかのように身形を整え、桂は宿から去って行く。
口になど、決してできなかった。
たとえ互いに恋しくてしかたなくとも、道を別つのを避けられないということは。
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