※この作品は性描写があります。18歳未満の方はお戻り下さい。
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「ぎんときー。入るぞ」
「え、ちょ、え?」
銀時の戸惑いをよそにからりと戸を開け、小太郎がバスルームへ入ってきた。何の躊躇いもなく晒された全身は白く滑らかで、銀時はそれだけで心臓がドクンとなるのを感じる。
「おまっ...俺が上がるまで待てねーの?」
「2人いっぺんに入ったほうが効率が良いだろう。多少狭いくらい我慢しろ」
うろたえている銀時を尻目に、小太郎はシャワーのコックを捻る。湯舟に浸かっていた銀時は眩しそうに目を細め、その身体が濡れていく様を眺めた。
2人が一緒に暮らすようになってから、今日で丸1週間が経つ。
義務教育を終えた銀時は孤児院を出、冬に養父母を亡くしたばかりの小太郎と、小さなアパートに暮らし始めた。
物心ついた頃から濃密に時を共有してきた2人が引き離されてから、4年。
まだ未成熟だった2人にはその年月はあまりに長く、こうして再び一緒にいられるようになったことが、銀時には未だ夢のように思える。
目を擦って頬をつねって、慣れない幸せの感覚が夢でも嘘でもないのを確かめてから、銀時はおもむろに立ち上がった。
「さて、と...ちょっと詰めろ」
「わ、何だ狭いぞ」
「洗ってやるよ、ホラここ座れ」
小さなバスルームの洗い場は、2人もいるとかなり窮屈だ。銀時は小太郎を自分と向かい合うように椅子に座らせ、自分は片膝立ちで、隅にあるシャンプーを手に取った。
孤児院にいたときも、よくこうして一緒に風呂に入り、小太郎の髪を洗ってやっていた。
昔からこの黒くなめらかな手触りが好きで、絹を洗うようにそっと、泡を絡ませていく。
小太郎はちんまりと行儀よく座り、頭を垂れて銀時にされるがままになっていた。
「...一緒に風呂だなんて、久しぶりだな」
「んー? ああ、そうだな」
どこか嬉しそうな小太郎の言葉に、銀時も柔らかな音で返す。
「子供の頃に戻ったみたいだ」
そう言って無邪気な笑みを浮かべる小太郎に、銀時は下腹のあたりがくぅともぞ痒くなるのを感じる。
それは子供の頃にはまだ、持ち合わせていなかった感覚。
「...ハイ、流しまーす。目ぇつぶってろよ」
「ん」
ざばあ、湯舟から掬った湯を豪快にかける。
シャワーもあるけど、孤児院にいた頃は洗面器で頭からお湯をかけていたから、そのときと同じように。
小太郎の黒い髪が滝のようにまっすぐに流れ、やがて頬や肩にしっとりと貼り付いた。
滴る肌、濡れた口唇。
もう、昔のような子供じゃない。
銀時は自然と吸い寄せられるように、小太郎の口唇に吸い付いた。
「...ん、っ...」
抱き寄せて、濡れたくちびるに舌を挿れ、ちゅく、ちゅく、つたない動作で掻き回す。
「ん...んんっ...」
ちゅ、ちゅく、ちゅ、ちゅぷ、
次第に行為はエスカレートし、互いの身体に触れ合いながら、2人未熟な口付けを繰り返す。
愛しくて愛しくて溢れそうな気持ちで。
「っは...」
行為の熱さにたまらなくなってきだのだろう、小太郎は突然逃げるように口唇を離し、のぼせたようにくたりと銀時の肩口にもたれかかった。
上気した肌と肌が、ひたりとくっつき合う。
熱くなった吐息が首筋に触れ、銀時は身体の芯がズンと熱くなるのを感じた。
「...ちょっと、そのままにしてろ」
小太郎の身体を支えたままボディソープに手を伸ばし、両手に馴染ませてから小太郎の背に掌を滑らせる。
ぬるっとしたその感覚に、
「っ...」
小太郎の背が小さく震えた。
「大丈夫、じっとしてろよ?」
あやすように言い、身体をもたれさせたまま、白い背中に泡を滑らせていく。だがその手つきは愛撫のそれにとても似ていて、小太郎は耐え切れずに身じろいだ。
「ん、くすぐったい、銀っ...、」
「コラ、じっとしてろって」
「そ、んなっ...ん、」
銀時の手は背中から太腿へ、爪先へ。宝物をいとおしむような丁寧さで、ぬるぬると泡を滑らせる。
「んぅ...、ぁ、」
全身をゆっくり優しく煽られて、少しずつ上がってくる、小太郎の吐息。
「ぎん、とき...」
少し震える声で見つめてくる小太郎の、目元はほんのりと染まっている。
「...きもちいい、か?」
そう問う銀時の眼も、熱を帯びて艶っぽい。
ぬめる手を白い肩から腕へと滑らせ、そのまま指先へと伝う。
そっと指を絡めて、また少し見つめ合って、
やがてどちらからともなく口唇を重ね合わせた。
繋いだ両手はそのままに、そっとゆっくりと、舌を絡める。
は、は、
互いの吐息の混じった湯気が浴室全体を包み、2人の温度を上昇させていく。
「...はぁ...」
ややあって離した口唇からは、銀の糸が引いた。
「...流そう、な」
湯舟から湯を汲み、今度は丁寧に身体に掛けていく。
泡に包まれた小太郎の身体が、湯に晒されて白さを露わにする。
全身の泡がすべて流れ、2人は改めて見つめ合った。
「...こたろ、こっち、来いよ」
銀時はその場で胡坐に座り直し、自らの膝元を指す。
「え...」
どうすればよいのか分からずに少し戸惑った小太郎の両手をくいと引き、銀時は小太郎を抱え上げるように引き寄せた。
「わ...、ちょ、」
小太郎は銀時を跨いで脚を開く格好となり、恥ずかしさにかああと顔が赤面する。
「...こたろ...」
少し見上げる銀時も、小太郎の姿態に目元が紅潮する。
何も纏わぬ姿のまま、こうして重なって向き合って。その際どい状況に、2人の表情が次第に熱に浮かされていく。
互いに濡れた髪、雫の滴る肌。普段とは違う、艶。
「...もっかい、キス、しよか」
少し掠れた声で、銀時が囁く。小太郎は小さく頷いて、薄く口唇を開いた。
伏せられた瞳、濡れた口元。
「ンっ...!」
突然箍が外れたように銀時は強く抱きすくめ、小太郎の口唇を乱暴に貪る。
「ンっ、ん、んんッ...!」
一気に激しさを増した行為に、それでも小太郎は応えようと、必死に銀時の首に腕を回す。
口付けを続けたまま、銀時の指が小太郎の入口に伸び、そのままぐいと侵入した。
「ぃんっ!」
小太郎の喉が啼く。その声に痛みが滲んでいるのを感じ、銀時は一瞬口付けを止める。
「...こたろ、」
短く名を呼んで再度交わした口付けは、不器用ながらも労わるように優しい。
ちゅ、ちゅ、啄ばむように口付けて、潜らせた指はゆっくりと中を擦り上げていく。
「...は、...んぁ、あっ」
内部から生み出される熱に、小太郎の息が次第に熱さを増してくる。
身体の奥からじくじくと全身を侵す快感。13の冬に初めて身体を重ねてから、少しずつ覚えていった、このどうしようもなく熱く切ない感じ。
「ぎん、とき...」
名を呼ぶ声は、少し上擦った。
「...こたろ、」
呼び返す声は、少しだけ掠れる。
次の瞬間2人は一気に繋がって、あとはもう、わけがわからなくなるほどに互いを求め続けた。
ちゃぷん、
狭い湯舟に2人向き合って入ると、もういくらかも隙間は残っていない。
手を、つないで。目は閉じて。
ぬるくなった湯は行為後の火照った身体に丁度良く、2人ともどこかぐったりと、しかし心地良さそうな表情で浸かっている。
ほのかな湯気に包まれた、穏やかな時間。
「...何か、寝そうだ...」
浴壁にもたれた小太郎がうっとりと呟いて、銀時は思わずぱしゃりと湯をかけた。
「ぶわっ、何をする」
「寝るな、寝たら死ぬぞ」
「そんなわけあるか、どこの雪山だ」
言い返しながらも目はうつろで、再び瞼が下りてくる。長い睫毛が露を含み、光に反射して揺れた。
「しょうがねーなー。ホラもう上がるぞ、拭いてやっから」
ぐったりとした小太郎を抱き起こすようにして立ち上がり、浴槽から出る。小太郎は銀時に支えられたままふらふらと歩き、浴室から出たところでくらりと崩れ落ちた。
「わ、オイ大丈夫か!?」
見れば全身は赤く火照ったままで、表情は朦朧としている。湯当たり、という言葉が銀時の脳裏に浮かんだ。
「だーかーら俺が上がるまで入ってくんなって言ったんだよ!一緒に入ったら絶対こーなるもん」
叫んだ途端、自らも視界がくらりと揺れるのを感じる。あ、俺ものぼせてる、思った瞬間倒れるのはどうにか踏みとどまった。
先刻の激しく長い交わりを少し後悔しつつ、しかし思春期真っ盛りの身体がそうそう止められるわけもない。
「...だい、じょうぶ、か...?」
小太郎がか細い息で問うのに、銀時はぐいと気を引き締めて小太郎を助け起こす。
「クソ、こんくらいでへこたれるもんか。待ってろ...水取って来てやる」
小太郎を壁にもたせて座らせ、バスタオルを肩にかけてやってから、銀時はふらつく足元で台所へと向かった。
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