※この作品は性描写があります。18歳未満の方はお戻り下さい。
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5.
「ほら...いい子だから、言ってごらん」
指を浅く挿入させたまま動きを止め、金時はあやすような声で誘う。
「一体誰に、こんなエッチな身体に、されたの...?」
その言葉はむしろ哀れむように優しげで、弱った心ならばすぐに陥落しそうなものだが。
「貴様、に、はっ、関係、ない...!」
浅い息を繰り返し、身体を小刻みに震わせながら、桂はそれでも頑なに金時の問いを拒む。
だがその気高さとは裏腹に、強い瞳は限界まで潤み、反らせた背に浮く肩甲骨はひどく艶かしい。
「...素直じゃないね」
金時はすいと目を細め、指をじわじわと侵入させていく。
「ぁ、ア...っ」
慣れた身体には物足りない刺激に、桂の腰がひくりと蠢いた。
「ヤらしい子」
金時は緩く笑みを浮かべ、長い指を桂の後孔に沈めていく。ゆっくりと、しかし確実に体内に侵入されるその感覚に、桂は息を詰めて身悶えた。
「ッ、ンッ、アッ...、はっ」
「ん...可愛い」
ひく、ひく、もっと欲しいと訴えるように蠢く内部。
高貴な顔立ちに、卑猥な姿勢、苦しげに濡れた表情、いやらしい啼き声。
凛々しく気高いものがこの上なく淫らに乱れる様は、征服欲、独占欲、嗜虐欲、ありとあらゆる欲望の対象となるだろう。
「こんなに感じやすいなんて、随分と調教されたみたいだけど...」
奥まで差し込んだ指で中をゆっくりとかき回しながら、金時は桂の反応を観察するように覗き込む。
「ひ、ぁっ、ぅ...あ、」
「教えてよ。いっつも、どんなこと、されるの」
指の動きを追うように震える身体に、金時は揶揄するような声でさらに追い詰めていく。
「こんなコトとか?」
指を挿入させたまま、もう片方の手で胸元をくちゅくちゅと撫でる。
「ぁあっ、ぁん、あぁンっ...!」
「それとも、こんなコトとか?」
っちゅ、
少し粘着質な音を立て、金時は指を引き抜く。瞬間、その指を追うように細腰が揺れる。
その淫らさに満足したように笑みを浮かべ、金時はシーツに顔を埋める桂の肩を掴んで仰向けに寝かせた。
「ね...、もっとよく、見せてよ」
足を左右に大きく開かせ、金時は桂の姿態を視姦するように見つめる。
頭上と顔の横でそれぞれシーツを握り締め、腕から脇、胴にかけてのラインには黒髪がうねるように張り付いており、その様は扇情的であるにもかかわらず気品が全く損なわれない。
恥じるように背けたその顔だちは聖職者のように清廉で、しかし浮かぶ表情は娼のように淫らに火照っている。
穢れを知らぬように白く清らかな下肢は大きくはしたなく開かれて、その中心には熱く濡れそぼった芯。
まるでこれから神に犯される生贄のように、この上なく、美しく卑猥な、“商品”。
神聖さと淫らさが極限まで混在したその情景に、金時ですら息を呑む。惹き込まれた意識を取り戻すべく軽く頭を振り、何かの儀式のような厳かさで、桂の体内に再び指をゆっくりと潜らせていった。
「っあ、あぁ、ぁっ、」
頭を左右に振り乱し、苦しげに喉を震わせる桂。焦らされ続けた身体は、待ち焦がれていたようにその侵入を熱く受け入れていく。
「...ね、教えてよ...誰に、どうして、こんないやらしい身体にされたの」
大きく左右に開いたその中心に指を挿入させたまま、金時は桂の顔の横に手を付いて覆い被さる。互いの吐息がかかるほどの近さで、金時は桂の瞳をじっと見つめた。
「アンタの性格からすると...何か、不本意な事情でも、あるんじゃないの?」
体内に侵入された指から伝わる疼くような快感が、桂の理性を鈍らせる。
熱く濡れた口唇と吐息で紡がれた言葉は、それでもなお頑なであった。
「俺、個人の、問題だ...、貴様、には、関係ない」
全身を巡る熱に喘ぎつつも、桂は金時の問いを遮断するように瞳を閉じる。
「身体はこんなに蕩けてるのに、心は溶けないんだね、アンタは...」
やや呆れたように、だがどこか真摯な眼差しで、金時は内部に潜らせた指の動きを急激に早めた。
「ヤっ!ぁあ、あぁあっ...!」
待ち望んでいた強い刺激に、桂は縋るようにシーツを掴んで身悶える。その表情を見つめながら、金時はさらに愛撫を激しくしていく。
「は、アァ、ッ、ぁあン...!」
やがて細い身体がビクンと揺れ、粘液が桂の下肢を薄く汚した。
「...なあ...」
朦朧と瞳を閉じた桂の耳元で、金時は独り言のように呟く。
「...惚れた、て言ったら、どうする...?」
『惚れた、て言ったら、どうする』
思わず零れた、その言葉。
少なからず驚いたのは、他ならぬ金時自身だった。
6.
「...貴様こそ、どうするつもりだ」
達したばかりで身体に昂りの残る桂が、快感の抜けない表情で、しかし感情のない声で問う。半分伏せた目を縁取る睫毛は、黒く、長い。
その瞳を、金時は無言で見つめた。
「俺が何かを話すまで、このまま責めを続けるか...?それとも同情して、ここでやめるか」
シーツをゆるく握ったままの手と、息を整えようと上下する肩。張り付いた黒髪。
全身を火照らせながらも強気な態度を崩さないその身体に、金時はおもむろに覆い被さる。
「そうだね...、」
桂の内部に潜らせていた指をゆっくりと引き抜く。
「ッ、...」
桂の身体がふるりと震えた。
「いたぶりもしないし、やめもしないけど」
器用な手つきで自分のベルトを外し、無造作に投げ捨てる。
「本気で、犯す。」
ゾクン、
桂の背筋を冷たい痺れが走った。
初めて動揺を露わにした瞳で金時を見上げる。
その頬を掌で包み、何かに憑かれたような眼で見つめ、
「俺の全部をあげるから、痛かったら泣いてね」
唇を合わせると同時に再び後孔に指を突き入れた。ただしその指は、3本。
「ンっ、」
衝撃に声を上げる間もなく、舌を深く絡め取られる。
一方で体内に挿し込まれた指は意思を持ってぐいぐいと中を押し広げる。
「っ、ッ、んン...!」
慣れた身体は快感に抗えず、全身を縛られたような錯覚に陥りながら、上下同時の侵入に桂はたまらず身悶えた。
「ダメ。」
金時は捩る身体を逃さぬように圧し掛かり、吐息すら漏らさぬように、巧みな舌で何度も口を吸い上げる。下を解す指は抵抗する隙もないほど絶妙に動く。
「ンン、ン、ッ...!」
快楽を吐き出せずに跳ねる身体を抑えようと、桂の手が必死にシーツを握る。
その手をくいと掴み、
「こっち」
自分の背に回させて、今度は唇を首筋に移動させる。
「っはぁ、は、は、」
自由になった呼吸は束の間、侵入を続ける指と敏感な肌を這う舌にひどく息を乱される。
火照った頬と、左右に散らばる黒髪。
「もう一回言うけど、」
指を引き抜き、右脚を大きく抱え上げ、
「本気で、犯すから」
熱い塊を一気に突き刺す。そのままぐいと腰を回す。
「ぁああッ...!」
内部を抉られるような感覚に、桂は全身を震わせて声を上げる。その手は知らずのうちに金時の背に縋りつく。
金時は少し動きを止め、
「痛かったら、泣いてね」
再度言葉を落としてから、一度引いた腰を大きく奥まで突き入れる。そしてギリギリまで抜き、強く押し込む。
「あっ、ぁ、や、あっ」
先刻までのいやらしいほど繊細な愛撫から一転した、単純かつ大胆なその動作。犯されることに慣れたはずの身体が、なぜか今まで感じたことのないほど過敏に反応する。
「ひぁ、や、あ...ぁッ」
まるで初めて抱かれているような錯覚。
我を失いそうなその感覚が怖く、桂は身体を捩らせながら、だだを捏ねる仔供のように頭を振った。
その唇を捕らえるように金時の口が吸い付き、腰をゆるく動かしながら、ねっとりと深く舐め尽くす。
「ん、ふ...ぁ」
全身の力を奪われるような、濃厚なキス。
やがてくったりと大人しくなった身体の、抱えた右脚を肩に掛け、左の膝裏を腕で抱え、さらに大きく開かせる。
より無防備な体勢になった桂の腰に手を沿え、今度は浅い抜き挿しを始める。
「や、ぁあ、は...ぁ、ぅ」
身体の奥から溢れ出る快感に、熱に浮かされたような表情で息をする桂。それを真摯な瞳で見つめながら、金時は揺さぶりを繰り返す。
「ぁ、あ、は、ぁ、」
律動とともに吐かれる息、規則的な腰遣い。官能のループ。
「ッ、ぁアっ!」
途端、その規律を破るように奥まで入り込んできた熱に声が出る。
覆い被さるように深く挿入した金時の、ふとぶつかった視線、真剣な瞳。
「痛かったら、泣いて」
奥まで挿し入れたまま掠れた声で囁いて、金時は桂の頬をじっとりと撫でる。
「...痛く、は、ない...」
金時の真摯な視線に応えるかのように、行為が始まってから初めて桂は口を開いた。
「ホントに?」
「例え痛くても、泣かん...」
吐息交じりのその声は小さく、金時の胸を突く。
「そっか...。強いね、君は」
でも、それじゃ、辛いだろうに。小さく呟いて、両手を桂の顔の横に付く。
改めて二人は正面から見つめ合った。
「ね...、タスケテって言わせたいんだけど、どうしたら、いい」
「...同情は、嫌いだ」
「...愛情なら?」
「...それも、断る」
「つれないなァ...」
呆れたように笑む金時の、その声は優しい。
「俺、結構本気なんだけど?」
「貴様の都合など知らぬ...、好きにするがいい」
「では、お言葉に甘えて」
再び唇が振ってくる。その熱さに目を閉じると、繋がったままの身体が疼いた。
自然と捩る身体を金時の手が引き寄せるように包み込み、
「俺、本気だから」
漆黒の瞳を見据えて囁き、腰をゆっくりと動かし始める。
「ぁ、ん、あ」
漏れる声と共に、背に回された手がひくりと震えるのが分かる。
金時は次第に動きを大きくしていき、細い身体を抱き締めながら、何度も何度もその奥を突いた。
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