「晋助も、来年は中学生になるのだな...」
感慨深げにそう言って、小太郎はゆっくりとグラスを傾けた。
修学旅行へ出かけて行った息子に想いを馳せているのか、その瞳は遠くを見ている。
夫婦2人きりの夜というのは実に数年ぶりで、しかし小太郎は心なしか元気がない。
「んだよ...どーせ寂しいんだろ?今日はまとわり付いてくるのがいねぇから」
俺はソファの隣に座る愛しい相棒の肩に手を回しつつ、自分もぐいとジョッキを呷った。
「ふふ...、そうだな」
小太郎は軽く微笑み、グラスに再度口を付ける。こくり、白い喉がなった。
俺はそっと小太郎の肩を抱き寄せ、その耳元にやわらかく口唇を這わせる。
「俺がいるのに、寂しいのかよ...?」
少し拗ねるような口調でささやくと、耳元に触れる熱にふ、と吐息を漏らしてから、小太郎はこちらを見遣った。
「何だ...子供相手に妬いているのか」
小言のような口調とは裏腹に、その瞳はおっとりと優しい。
「まあ、2人きりってのも、悪くないんじゃないの...?」
こうして小太郎を完全に独占できるのはかなり久しぶりだ。
耳に吹きかかるような熱い息で囁いて、抱き寄せる手に少しだけ力を込めると、小太郎の身体の力がゆっくりと抜けるのがわかった。
「...まったく、困った父親だな...」
少し咎めるような口調で、それでもやわらかく微笑み、俺の肩に頭をそっと凭れさせる。
俺は肩に回した手を小太郎の腕に沿ってゆっくりと撫で下ろし、掌を上から重ねて指を絡めた。
「いーじゃん、たまには...」
重ねた小太郎の掌は、少し冷たい。それを暖めるように包み込んで、もう片方の手を小太郎の頬に沿わせ、そっとくちびるを塞いだ。
甘く啄ばみながら、小太郎の手のグラスも置かせて、ゆっくりとくちづけを交わす。
「ん...」
何度も角度を変えながら、長く穏やかにくちびるを重ね、それからそっと舌先を潜らせる。いつもならここまでで押し返されるリビングでの戯れは、今夜は子供がいないせいか、存外素直に受け入れられた。俺にはそれがちょっと嬉しくて、もっと深く舌を挿し入れる。
「っ、ふ...」
甘い吐息が漏れ、俺は下っ腹がじんとするのを感じながら、手を小太郎の上着の下から潜り込ませた。
「こ、ら...」
諌めるような小太郎の言葉を無視し、俺の指は腹部を伝って上へ登り、胸元へ辿りつく。
小さく勃っているそこに触れる少し前で指を止め、再びくちびるを深く頬張った。
「...んんっ...」
鼻から抜けるような、色っぽいその声。俺は舌を深く絡めながら、服の中に潜らせた指で胸元の突起につんと触れる。
「ア...」
じぃん、
悩ましげな吐息と共に、小太郎の身体の熱が少し上がったような気がする。じわじわと胸元を攻めると、次第に小太郎の表情が蕩けていくのが分かった。
「ふ、ぁ、ぎ、んとき...」
細腕を俺の肩に回し、縋るようにいとおしむように、後頭部から首筋にかけてをおそるおそる撫でてくれる。
その仕草に俺はたまらなくなり、ソファに小太郎をどさりと押し倒した。
「ん、ん...」
そのままくちづけを続けながら、小太郎の服を脱がしていく。
暖色系の間接照明のみのリビングで、その肌はさらに艶かしく色づいて見える。
「ん...っう、...ン...」
半ば強引に脱がされながら身体を捩らせ、それでも強く抵抗はしない小太郎に、俺はいとおしむようにくちづけを降らせていく。少しずつ露わにされていく身体が、俺の本能をじわじわと煽る。
「ぁ...は...」
甘い息を漏らしながら、服をすっかり脱がされて、小太郎は少し恥らうように顔を背けた。
「やっぱ、おめーの裸、好きだわ...」
素肌をすべて晒した小太郎をまじまじと見つめ、俺は不覚にもごくりと喉を鳴らす。
「...な、何を言う...」
かあと赤くなった顔の脇に手を付いて覆いかぶさり、俺は小太郎の表情を正面から見つめる。瞳に映る俺の表情は、すっかり雄のそれだ。
リビングのソファの上で裸、という、普段ならばありえない状況に、より興奮を覚えてしまう。それは小太郎も同じようで、まだほとんど何もしていないのに、すでに少し息が早い。
「これ、俺のモンだもんね...」
圧し掛かってぎゅうと抱きしめると、子供か貴様は、という声がくぐもって聞こえた。しかし背に回された手は優しく俺を包む。
はぁ、はぁ、
互いの息遣いが、静かなリビングに響く。
小太郎の両脚を膝で割って開かせ、そこに俺の下半身を割り込ませてさらに深く抱きすくめると、
「ぁ...」
やらしい姿勢をとらされたせいか、もうそれだけで甘い声が漏れた。
「もう、感じる...?」
まだ何もしてないよ、と耳元でささやいてやると、小太郎は恥ずかしそうに眉を寄せて目を閉じた。
「...こんなところで、脱がせるな...」
負け惜しみのようにつぶやいたその声がたまらなく可愛くて、俺はついいじめたくなってしまう。
「なに、ここで裸にされたのが恥ずかしいの...?」
晋助が家族の一員となって以来、セックスは寝室でしかしていない。それというのも、他の場所でちょっかいを出すとすぐさまアッパーカットが返ってきて、やれ教育に悪いだの父親としての自覚を持てだのと、長い説教を聞かされるからだ。
こいつの頭の中はほとんど晋助でいっぱいで、俺としては少し、何と言うかその、いじけちゃうんです。
「リビングのソファで、俺に全部脱がされて、裸にされて脚開かされてるから、感じるの...?」
耳元で舐るようにささやくと、ゾクリ、と小太郎の身体が粟立つのが分かった。
「バっ...」
何か罵りの言葉を吐こうとするくちびるを先にキスで塞いで、指先を胸元に這わせながら、俺はさらに続ける。
「もっと感じること、しよっか...?」
指の腹でそっと突起に触れると、
「ぁんっ...」
甘い甘い、痺れるような声が零れた。
「裸にされて、触られて、これからもっと俺にエロいことされるかもしれないから、感じるの...?」
低い声で攻め、再び反論の言葉がくる前にくちびるを塞ぐ。
「ん、ぅ...」
いとしいいとしいそのくちびるを味わってから、俺は押しの言葉を落とす。
「それでそんなに感じてるんなら、すげー嬉しいよ、俺は...」
だって、俺のことそれだけあいしてるってことだろ?
言ってその首筋に顔を埋めると、小太郎は恥ずかしさを隠すようにため息をついて、俺の頭を抱きかかえた。
「まったく、貴様は...」
最近あまり俺に構ってなかったことに気付いたのだろう、言う声は深く優しく、暖かい。
「小太郎、今日は2人きり、だな...」
「...そうだな...」
ため息交じりに応えるその声はひどく艶っぽくて、俺はたまらなく血が滾るのを感じる。
「な、今日...一緒に風呂、入ろうか」
いつもはチビ助にとられてしまう小太郎を、どこまでも独占できるのがアホみたいに嬉しくて、俺は白い首筋に舌を這わせながら問いかける。
「...仕方のない、やつだな...」
ん、ぁ、
這う舌の感触に身体を捩らせ、甘い息を吐きながら、小太郎は困ったように、それでもやわらかく、微笑みを返した。
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