「んく、」
突然かけられた夜這いに、気付かないほど疲労していたのかそれともこいつだからなのか、心底不覚に思いながら、ふさがれた口唇を離すように身体を押しやる。
「んンっ」
だけど熱く押し当てられたその口唇は離れるどころか、さらに深く侵入してきて、熱い舌が好き勝手に口内を荒らしていく。どこか甘い味がして、それはいつものことなのだけど、でもその舌がいつもよりやわらかでやさしいのは、なぜ。
「ん、ふ、ぁ」
少し冷えた指にやわやわと絡められるこいつの指は温かく、じわり、じわり、身体に甘い感覚が沁みてきて。
「は、ふ・・・」
身体の奥からゆっくりと滲んでくる熱い息を逃がしながら、
ああ、そうか、
やっとこの夜這いの理由に思い当たる。
「ふ、」
少し笑みを浮かべた俺の口唇に気付いたのだろう、銀時はようやく口唇を少しだけ離して、
「よぉ、ジジイ」
何を言うかと思ったら、憎らしい言葉を吐いてくる。
「何だ、小僧」
そういえば、よくこんなやり取りをしていたと、遠い記憶を辿ってみれば、俺の人生における毎年この日のほとんどが、こいつから始まっていたような気がする。
「おめ、小僧はねェだろ・・・4ヶ月弱の差で」
「貴様こそ、ジジイとは何だ・・・改めろ。そして敬え」
「何で同い年を敬わなきゃなんねぇんだよ、バカ」
「バカじゃない桂だ、なぜ同い年にジジイ呼ばわりされねばならぬ」
恒例のような言い合いをしている間も、絡めてくる指はやわらかく温かく、その声は憎らしいほどに甘くやさしい。
「まぁ、まぁ、いいから」
自分から言い合いを仕掛けてきたくせに、だだっ子を宥めるような声で頭を撫でて、
「ぅん」
再度口唇がふさがれる。
粘膜を触れ合わせたそこから、とろけるような甘さが沁みてきて、その甘さが全身に広がっていくのがわかって、でもこのまま流されるのは少し悔しくて、そのふわふわの髪をくしゃりと掴む。
「こらこら、痛いだろ?」
やはり宥めるような声で、低く穏やかに囁かれ、もぞもぞと少し気まずい気持ちで視線を泳がせていると、
「おとなしく、受け取んなさい」
ゆっくりと甘いくちづけが、首筋に降りていく。
じん、じん、
口唇に触れられたところから、熱い痺れが体内に沈んでいって、甘い感覚が身体の奥から湧き起こってきて、
「ぎんとき、」
その名を呼ぶと、なぜか心まで甘い気持ちに満たされて、
やさしくゆっくりと始まったその贈り物に、しばし身を任せた。
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