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※この作品は性描写があります。18歳未満の方はお戻り下さい。
18歳以上の方は自己責任でご閲覧下さい。

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「おはよう晋助、そろそろ学校へ行く時間だろう?制服はどうした」
昨夜さんざん抱かれたせいでいつもより起きるのが遅れた小太郎が、リビングへ入ってきて開口一番、愛しい伴侶の俺より先に私服姿の息子に声をかける。
甘くカッコイイ祝いの言葉を用意していた俺が立場をなくして突っ立っているその脇をすり抜けて、晋助はまだパジャマ姿の小太郎にがっしと抱きついた。
「こたろー、お誕生日おめでとう!今日は一日ずっといっしょにいてやるからな!」
「あっバカ!俺より先に言うなコノヤロー!」
「子供に向かってバカとは何だ銀時!晋助、ありがとう。気持ちは嬉しいがな、学校には行っておいで」
俺に鋭く言葉を放ってから、晋助の頭を優しく撫でる小太郎。晋助はますます嬉しそうな顔で小太郎に抱きつく。チクショー、でも銀さんはあんなことやこんなことを小太郎としてるんだもんね、と昨夜のことを負け惜しみのように思い出してから、俺は自分に注意を向けるべく咳払いをひとつ。
「小太郎、いいんだよ。晋助はもう休む連絡はしてある。今日は俺も仕事を入れてない。つまりだな、俺達からのプレゼント、今日一日家族団欒だ。固いこと言わずに、受け取ってくれや」
そう、小太郎の望む一番のプレゼント、それは家族3人でいっしょに時間を過ごすこと。
この春から中学に進学し帰りも遅くなってきた晋助、探偵という自由業ゆえに生活が不規則な俺。俺の仕事を補佐する小太郎も、俺とは違う動きをするから、一緒にいられる時間はそうはない。家族で過ごす時間がほとんどないことを、小太郎は内心悲しく思っていたに違いないのだ。
俺の言葉に最初は戸惑った顔をした小太郎だったが、俺と晋助の顔が大マジなのを見て、困ったように小さくため息、それでも頬が少し赤らんでいる。付き合いの長い俺には、小太郎がものすごく嬉しがっているということが手に取るように分かった。
「誕生日おめでとう、小太郎」
ベッドの中で何度も甘くささやいた言葉を、朝日の下でもう一度贈る。小太郎はしかめっ面をやわらげ、はにかみながらゆっくりと笑った。
「ありがとう、銀時、晋助」
その笑顔はとても幸せそうで、俺は心から嬉しくなる。
この3人の中で、唯一まともな家族をもったことがあるのは小太郎だけだ。そのせいか、小太郎は俺達に家族の暖かさ、優しさを与えようとどこか必死なところがある。こいつはいつだって、俺達が幸せな家族であることを、心から望んでいるんだ。
俺は小太郎の愛しい笑顔を見つめながら、何度となく迎えてきたこいつの誕生日と、これまで共に過ごしてきた長い長い時を想った。


俺と小太郎の始まりは、それこそ物心ついた頃からだ。
俺の一番古い記憶は、孤児院の片隅でうずくまっている俺に手を差し伸べる小太郎の姿。
ああ、俺はこいつとならば生きていけるかもしれないと、幼い心で強く感じたのを覚えている。

俺と小太郎は、同じ孤児院で育った。俺は捨て子だったが、あいつの両親は事故死だったらしい。
孤児院での辛い日々の中、お互いだけが、世界の全てだった。幼い頃2人で過ごした濃密な時間は、今の俺達を形作っていると言っても過言ではないだろう。
だが、11の春。別れはあっさりとやってきた。
小太郎は養子を求めて来たとある老夫婦に気に入られ、そのまま引き取られていってしまった。あいつは俺を置いて行くことなどできないと最後まで泣きじゃくっていたが、所詮は非力な仔供。そうすることが小太郎のためだと言って、大人達は俺達を勝手に引き裂いていった。俺はこの世が破滅するほどの絶望的な気持ちで、大人に手をひかれながら何度も何度も振り返る小太郎を見送った。

それからの数年間、俺は孤児院、小太郎は遠く離れた地で幸せな家族を。どこか遠慮しながらも、暖かい老夫婦との暮らしはそれなりに幸せだったのだろう。あいつは俺のことだけがずっと気がかりだったらしい。
そして、13の冬。
ある事情から2年ぶりに再会した俺達は、その夜に初めて身体を重ねた。震える小太郎をなだめつすかしつ、まあほとんど強姦みたいなものだったんだろう。2年前と比べて随分マセた俺の豹変振りに怯えつつも、最終的にあいつは、俺を受け入れてくれた。
それから小太郎は月に1回、どんな無茶をしてでも必ず俺のもとへ帰ってきた。あいつがいない間にすっかり荒んでいた俺を、決して見捨てないというように。
正直、あいつが戻ってきていなかったら、俺はお天道様の下では生きていられなかっただろう。小太郎を失ってからすっかり心を閉ざしていた俺は、この世の裏で生きる連中との付き合いを覚え、犯罪の下請け的なことをやっては小遣いを稼いでいたんだ。道を外しかけた俺を救ったのは、あいつだった。

15の冬。小太郎の養父母が、相次いで亡くなった。
もともと祖父母と言っていいような年齢の夫婦だったが、ようやく手に入れた家族をたった4年で失った小太郎の傷は大きかっただろう。だがあいつは気丈に振舞い、通夜も葬儀も立派に済ませ、人前では一粒も涙を見せなかった。
全てが終わった後、空っぽになった古い家屋の、部屋の隅で、静かに佇むあいつは今にも消えてしまいそうに見えた。
俺は、俺が小太郎を救えるのは今しかない、と思った。俺はいつも小太郎に救われてばかりだった。今度は俺が、こいつを救う番だと思った。
「泣けよ」
俺はあいつに言った。
「俺がお前の、家族になる。俺がお前を、全力で守る。絶対にもう、悲しい思いはさせないから、今だけは、泣け」
滅茶苦茶だが、今思えばそれが俺の、プロポーズだった。

年が明けて、15の春。義務教育を終えた俺は、孤児院を出、小太郎と2人で暮らし始めた。
小太郎は養父母の遺産と奨学金で高校へ進学。自分も働くと言って聞かなかったが、勉強の出来た小太郎の進学は養父母の願いでもあったから、最後は俺の説得もあって進学を選んだ。
あいつが高校へ通う一方、俺は自分のツテを使って仕事を始めた。法に触れるようなことは小太郎が悲しむからしなかったが、すれすれのことは結構やっていたと思う。15の若造が生きていくには、世間は生易しいものではなかったのだ。

18の春、小太郎が高校を卒業すると同時に、俺たちは探偵事務所を開いた。
その頃はまだ2人とも未成年だから、仕事を取ってくるのも一苦労。俺のツテから少しずつ仕事を流してもらい、何とか2人でやってきた。小太郎を変装させては調査先へ忍び込ませる、なんてことも何度あったか知れない。その度に俺は、こいつを危険な目に合わせる自分を嫌悪したものだった。
そうしてがむしゃらに働いて、仕事がどうにか軌道に乗ってきたある日。俺たちの耳に、孤児院がなくなるという噂が入った。
俺にとってあの場所は忌まわしい記憶のほうが多かったが、律儀な小太郎は一人でなくなる寸前の孤児院を訪れたらしい。
そして連れ帰ってきたのが、当時8歳になったばかりの晋助だった。
「今日から、俺たちの子だ」
そううれしそうに言う小太郎。家族のかたちは、こうしてできあがった。

「こたろー、お誕生日ありがとう」
「バーカ、テメーがお礼言ってどうすんだよ。おめでとうだろ」
「うるせぇ、いいんだよ。こたろがこの世界にいてくれて、おれは本当にうれしいんだ。ありがとう、こたろ」
小太郎に纏わり付いて離れない晋助と、小太郎の、幸福そうな笑顔。俺はやれやれと思いながら、晋助ごと小太郎を抱きしめてやる。
「俺も。ありがとう、小太郎」
耳元でそう囁く。少し頬を朱に染めて、小太郎は心からの笑みを俺に返した。

すきだ、すきだ、すきだ。
巡り逢ったそのときから、小太郎は、俺の世界のすべて。
ずっとずっと大好きで、俺の全部で、あいしてる。

なのに。
こんなにもあいしているのに、どうしようもなく、壊してしまいたくなるのは、な、ぜ。

それはもう、あまりにどうしようも、なく。


夕食後、しゃかしゃかと皿を洗う小太郎の後ろ姿。エプロン越しに見るその薄い肩、細い腰。俺は宿題もせずに、その身体をただただ眺め続ける。
「...どうかしたのか、晋助?」
俺の視線に気づいたのか、小太郎がふと振り返った。
その髪の隙間から覗く耳、喉、首筋。白くなめらかなその肌。
手を伸ばしたい。吸い付きたい。脱がせて触って組み伏せて、めちゃくちゃにしてしまいたい。
「...晋助?」
見つめたまま黙りこくってしまった俺に、小太郎はするすると近寄ってくる。
「体調が悪いんじゃないか?顔色がよくない」
心配そうに言って手を頬に伸ばす。瞬間ふわりといいにおいがし、俺の胸がズキンと疼く。
「...さっ、触るな!」
思わずその手を払いのけると、予想以上に強く当たり、パチンと痛い音がした。
「晋助...?」
一瞬ひどく驚いた、小太郎の顔。ああ、俺って最低。
でも同時に別の思いが湧く。このまま押し倒したりなんかしたら、もっともっと驚くだろうか。
「...ごめ、ん...」
俺は黒い感情を搾り出すように、やっとのことで声を出した。
「晋助。何か、あったのか」
今度は真剣に心配した瞳で、俺の顔を覗こうとする。俺の視線は自然とそのくちびるへ。やめろ、それ以上近づくな。
「...うるせェ、」
目を合わせないようにして立ち上がり、俺は自分の部屋へ向かう。後ろでは小太郎の、俺を呼ぶ声。
お願いだ、そんな澄んだ声で呼ばないで。
俺はもっと別の音色を、聞きたくなってしまうから。


もやもやした頭のまま、俺はベッドに倒れ込む。
目の前にあるのは、親子という名の残酷な現実。
小太郎にとって俺はあくまでも“子供”で、たとえどんなに成長しても、その事実は変わらない。
いっそほんとの親子なら、諦めることもできたのに。
じぶんが深く愛されているのはしっているけど、
でも。だから。
苦しい。苦しい。
衝動がこみあげて、もやもやした気持ちが渦を巻く。
下っ腹までもやもやしてきて、無意識のうちに想像するのは、小太郎のいやらしい姿。
白くしなやかなあの身体を、裸にして、滅茶苦茶に舐めて、エロい声をあげさせて、ぽってりとしたくちびるに吸い付いて、舌を挿れてかき回して、長い髪に指を絡めて、身体中を撫で回して、その滑らかな肌に身体を密着させて、
見たい。聞きたい。犯したい。
真面目な顔を火照らせて、どろどろに蕩かしてしまいたい。
渦巻く性欲、昂るカラダ。
はあはあ喘ぐ小太郎の声は、どんなにやらしいことだろう。
くねくねうねる小太郎の裸は、どんなにえろいことだろう。
叶わぬ夢を想像しては、独り虚しい行為に耽る。すきだ、すきだ、こたろ、こたろ。
「っく...」
そして襲ってくる、罪悪感。
地獄だ。
こんなにもそばにいながら、絶対に触れることができないなんて。

昔のように何の屈託もなく抱きしめることが出来たら、どんなにいいだろう。
今もしアイツの身体に触れてしまったら、俺はきっと、止まらない。



「銀時。近頃、晋助の様子がおかしいんだ」
風呂から上がってきて酒肴を用意し始めた銀時の背に、小太郎は真剣な表情で口を開いた。
「...何がおかしいって?」
答えの先を予測しつつ、銀時は平静を装って問い返す。
「何というか...ぼうっとしていたり、苛立っていたり。何か言いたそうに俺を見ているかと思えば、俺が近づくと余計に荒れる...。一体、どうすればいいのだろう」
銀時の向かいに座り、憂いを帯びた表情で目を伏せる。全く気付いていない小太郎の鈍さに、銀時は内心ため息をついた。
「バッカおめ、それは...」
思わず出そうになった言葉を飲み込み、ごまかすように頭を掻く。小太郎はそんな銀時にお構いなしに、ひどく深刻な様子で考え込んでいた。
「反抗期、なのだろうか...」
「あァ?あいつは生まれたときから反抗期だろうが。どっちかっつーとアレだ、発情期?」
「俺は真面目な話をしているのだぞ、銀時!」
ぴしゃりと机を叩かれる。
「イヤ真面目なのはよくわかってるんだけどね、ほら、真面目すぎるのも困りモンだっつーか...ま、ま、いいから飲めよ」
とりあえずビールを差し出してみるが、小太郎は眉をきゅっと寄せ、小難しい顔で銀時を睨みつけるのみだ。銀時はやれやれと息をつき、小太郎を正面から見つめた。
「晋助も、いろいろと考える時期なんだよ。あまりこっちがオロオロしてっと、よくねぇぞ」
「それはそうだが...、俺は、晋助に、幸せに育ってほしいんだ。ただ、それだけなんだ」
心の底から、そう呟く小太郎。銀時は黙ってその肩を抱き寄せた。
「だから何かに苦しんでいるのなら、支えになってやりたい...せめて話だけでもしてくれたらと思う。...だって、家族だろう」
『家族』。
血のつながりなど何もないこの危うい関係を、小太郎は何の躊躇いもなくそう呼ぶ。
晋助も銀時も、そのまっすぐさに救われたことは何度もある。だが、今の晋助にとってそれほど残酷な言葉はなかった。
「...少し、放っておいてやったほうがいいこともあンだよ。あんま考えすぎんな。ほら、酒の用意しとくから、早く風呂入ってこい、な?」
なだめるように肩を叩き、台所から押し出す。小太郎は浮かない表情のまま、それでもおとなしく銀時の言葉に従った。
小太郎が去ってから、ふうとため息をつく。
「晋助も、辛ェだろうよ...」
一人残された銀時は、遠い眼をしてぽつりと呟いた。



 

「さ、さかもと...っ」
「なぁん?」
穏やかな声でのんびりと応じる坂本の、その手はしかし桂をがっしりと捉えて放さない。
突然握られた手首と抱き寄せられた背、近付けられた唇、あたたかな眼差し。
うろたえておどろいて目が泳いで口がぱくぱくして、その様を坂本はいとおしそうに目を細めて見つめている。
「さかもと...、」
「なぁん?」
もう一度名を呼ぶと、さっきよりももっとやわらかな音で返事が返ってきた。でもその目つきはガラにもなく真面目で、どこか切なそうで。
掌のあたたかさが制服の上からでも分かる。いつ唇を奪われてもおかしくない程の距離。
「さ、さかも...」
「のぅ、こたろう、」
動揺しまくっているのだろう、名前以外の言葉が出てこない桂の後頭部をそっと撫でて、坂本が穏やかな、でも芯の強い声でゆっくりと述べる。
「キスするが、えいか」
「え、わ、ま、」
言われた台詞にすこぶる慌てる桂の、そのくちびるが次にだめだと模りかけるのを感じ取り、坂本は瞬時に自分の感情を封じ込めた。
「なーんての、うそじゃよ」
ニカリと大きな笑みを浮かべ、小さな頭をわしゃわしゃと撫で回す。
「すまんすまん、あんまり可愛いきにからかいとうなってしもた。許せ」
「...ッ、坂本貴様っ!」
顔を真っ赤にして怒り出す桂にアッハッハッハと笑いを返し、坂本はコンクリートの上に仰向けに寝転がった。校舎の屋上から見えるのは、空を漂う白い雲。
「のぅ、こたろう。今度おんしの家に遊びに行ってもええか?」
「へ?」
怒っているところに突然話題を変えられ、桂は思わずとぼけた声を返してしまう。坂本は悪戯っ子のような目をくりっとさせて桂を見返した。
「銀時、ちゅうんに、わしも会うてみたいぜよ。こたろうの大事な家族なんじゃろ?」
いつも桂が楽しそうに話して聞かせるのは『銀時』の話題がほとんどで、おそらく『銀時』は桂にとってかけがえのない存在なのだということが坂本にはよく分かっていた。
雑多な高校生群の中で際立つ美貌と孤児特有の毅然とした立ち姿を持ち、入学当初からどこか近寄りがたい雰囲気を纏わせていた桂が、高校生活の中で唯一心を許したのが自分である、と坂本は思っている。
金持ちのボンボンと孤児の奨学生、という一見ちぐはぐな取り合わせだが、裕福な家に育った者特有の大らかさと人懐こさが桂には心地よくあるらしく、初めこそ邪険に扱われはしたものの、桂は次第に坂本といることを好むようになった。
そんな桂が最も素を見せるのがこの『銀時』の話題で、怒ったり笑ったり、ときには泣いたりしながらも、坂本に同居人のことをあれこれと話して聞かせる。
生き生きと話す桂の様子を好ましく思い、また小太郎にそんな顔をさせる『銀時』に自然と関心が湧き、そしてどこかで、羨ましかった。
「...そうだな、実は銀時も坂本に興味をもっているようなんだ。俺の友人になるなんてどれだけ無謀な奴だとか言うんだぞ、全く無礼な男だろう。だがきっとお前達は気が合うぞ、そう言えばどこか似ているな、その天パとか」
先刻のキス未遂事件がなかったかのようにガラリと嬉しそうな表情をして、桂は次々と言葉を並べていく。
銀時の次の休みはいつだったとか、何なら夕飯を食べに来るといい銀時は意外と料理がうまいんだとか、くるくると回る瞳は本当に楽しそうで、その様子に坂本は、自分の切なさにそっと封をして胸に収めた。

 

 

 

 

「ほーぅ、おんしが金時かー」
「ちげーよ銀時!オイ小太郎、何だこの失礼な黒い毛玉は!」
「毛玉じゃない、坂本辰馬だ。よく話して聞かせているだろう。ほらちゃんと挨拶しろ銀時、失礼なのはお前だぞ」
「...どーも。ウチの小太郎が、世話ンなってます」
いきなり所有権を主張するようなその挨拶文句に、坂本は思わず笑い出してしまった。
 

互いに桂から話をよく聞かされていたせいだろう、初対面にも関わらず、打ち解けるのは早かった。
居間のちゃぶ台を3人で囲み、銀時特製の鶏団子鍋と坂本の持参した菓子や飲み物を前に、同い年の3人が馴染み合うのは最早時間の問題で、何だかんだと馬鹿なことを喋っては笑い合い小突き合い、気がつくとすっかり夜が更けていた。
同年代の人間とこうして時間を共有するのは銀時にはかなり稀な経験だ。友人を紹介したいんだ、お前もきっと好きになると思う、そう言って桂が連れてきた初めての客は、未成年が2人きりで住んでいるこの家独特の空気にいともあっさりと馴染んでしまった。
持って生まれた気質なのだろう、まるで大きな犬のような温かさと人懐こさは、あの桂が気を許しただけのことはある。
絨毯の上で早々に眠り込んでしまった桂に毛布をかけてやりながら、銀時は改めて、この珍客について考えた。
「さてと...。アンタ、何か飲む?せっかく持ってきてもらったし」
おもむろに冷蔵庫を開け、坂本の持参したビールや酎ハイの缶を取り出して見せる。小太郎は未成年の分際でとんでもないと飲むのを許してくれなかったが、ほうじゃの姫君も眠ったことじゃしと、坂本は悪戯っぽく笑った。
「...コイツ、高校ではどう、うまくやってんの」
イチゴ酎ハイのプルを開けながら座り込み、銀時が無造作に尋ねる。坂本もビールの缶を手にし、カチリとプルを開いてから頷いた。
「おう、本人は全く気付いとらんようやがの、隠れファンは多いぞー。ファンクラブでもできんばかりの勢いじゃ。こりゃあ、学年上がったら一緒に生徒会なんぞやると面白かろうのぅ」
「ファン、ねえ...」
ぐびりと缶を煽った坂本の姿を横目で見ながら、銀時は今日の初めからずっと心にあった一言を口にする。
「で、アンタは小太郎の何?」
一瞬放った視線は威嚇するように鋭い。坂本は笑みでそれを受け止め、次に目を見据えて珍しく真面目な口調で答えた。
「...友達じゃよ。ほんに、友達じゃ。おんしは何も心配せんでええ」
それは手負いの獣を諭すような、深く真摯な言葉。自分の気持ちを幾重にも包装して心の深くに沈め収めている、そんなことは微塵も感じさせない、友達を思うがための言葉。
「わしゃ、おんしから小太郎を取ろうなぞ思っちょらん。安心しとおせ、わしはおんしらの築いてきた繭を壊すようなことは絶対にせんよ」
熱いぞヤケドすんなよと言って取り分けた鍋の具を少しふうふうしてから桂に渡してやる銀時、手製の鶏団子を口にして今日のはいつもよりいい匂いがするとはふはふしながら言う桂、おう気付いたか今日は隠し味にコンソメ入れてみたんだと嬉しそうに応える銀時、口いっぱいに頬張ったままそうかさすが銀時と言いかけて喉に詰めかける桂、その桂の背をとんとんと慣れた手つきで叩き水を飲ませてやる銀時。
そのやりとりをにこにこ笑いながら見ていた坂本には、この2人が今までどれだけ魂を共有して生きてきたかということが痛いほどに分かった。
「ほんにおんしらは寄り添い合って生きる仔猫みたいなもんじゃのう、金時」
そう言って真面目な表情から一転、大きくニカリと笑ってみせる。
「それにおんしのことも好きになったきにのーわしゃあ」
「そ、そりゃどーも...」
よく晴れた空のような坂本の笑みに毒気を抜かれ、銀時は頭をぼりぼりと掻いた。
「それと、金時じゃねーって何回言わすんだ、この黒モジャ」
「アッハッハッハーこりゃ手厳しいわい」
笑う坂本に安心したように、銀時は眠る桂の髪をそっと撫ぜる。そのうち互いに向けた言葉が照れくさくなってきて、銀時と坂本は2人どちらともなく笑い出した。
「ほれ、酒がまだこんなにも余っちゅう。おんし酒は飲めるんかの?」
「おうよ。特に甘系なら任せとけ」
幸せそうに眠り込んでいる桂を起こさぬようヒソヒソ声で、男2人の酒盛りが始まる。
「のぉ金時。また、ここへ来てもええかの?」
「銀ね銀。いいんじゃねーの?でも手ぶら禁止な」
新たな缶を開け、この夜にかんぱーいと、2人の青年は小さな声で友情の始まりを祝福した。
 

「晋助も、来年は中学生になるのだな...」
感慨深げにそう言って、小太郎はゆっくりとグラスを傾けた。
修学旅行へ出かけて行った息子に想いを馳せているのか、その瞳は遠くを見ている。
夫婦2人きりの夜というのは実に数年ぶりで、しかし小太郎は心なしか元気がない。
「んだよ...どーせ寂しいんだろ?今日はまとわり付いてくるのがいねぇから」
俺はソファの隣に座る愛しい相棒の肩に手を回しつつ、自分もぐいとジョッキを呷った。
「ふふ...、そうだな」
小太郎は軽く微笑み、グラスに再度口を付ける。こくり、白い喉がなった。
俺はそっと小太郎の肩を抱き寄せ、その耳元にやわらかく口唇を這わせる。
「俺がいるのに、寂しいのかよ...?」
少し拗ねるような口調でささやくと、耳元に触れる熱にふ、と吐息を漏らしてから、小太郎はこちらを見遣った。
「何だ...子供相手に妬いているのか」
小言のような口調とは裏腹に、その瞳はおっとりと優しい。
「まあ、2人きりってのも、悪くないんじゃないの...?」
こうして小太郎を完全に独占できるのはかなり久しぶりだ。
耳に吹きかかるような熱い息で囁いて、抱き寄せる手に少しだけ力を込めると、小太郎の身体の力がゆっくりと抜けるのがわかった。
「...まったく、困った父親だな...」
少し咎めるような口調で、それでもやわらかく微笑み、俺の肩に頭をそっと凭れさせる。
俺は肩に回した手を小太郎の腕に沿ってゆっくりと撫で下ろし、掌を上から重ねて指を絡めた。
「いーじゃん、たまには...」
重ねた小太郎の掌は、少し冷たい。それを暖めるように包み込んで、もう片方の手を小太郎の頬に沿わせ、そっとくちびるを塞いだ。
甘く啄ばみながら、小太郎の手のグラスも置かせて、ゆっくりとくちづけを交わす。
「ん...」
何度も角度を変えながら、長く穏やかにくちびるを重ね、それからそっと舌先を潜らせる。いつもならここまでで押し返されるリビングでの戯れは、今夜は子供がいないせいか、存外素直に受け入れられた。俺にはそれがちょっと嬉しくて、もっと深く舌を挿し入れる。
「っ、ふ...」
甘い吐息が漏れ、俺は下っ腹がじんとするのを感じながら、手を小太郎の上着の下から潜り込ませた。
「こ、ら...」
諌めるような小太郎の言葉を無視し、俺の指は腹部を伝って上へ登り、胸元へ辿りつく。
小さく勃っているそこに触れる少し前で指を止め、再びくちびるを深く頬張った。
「...んんっ...」
鼻から抜けるような、色っぽいその声。俺は舌を深く絡めながら、服の中に潜らせた指で胸元の突起につんと触れる。
「ア...」
じぃん、
悩ましげな吐息と共に、小太郎の身体の熱が少し上がったような気がする。じわじわと胸元を攻めると、次第に小太郎の表情が蕩けていくのが分かった。
「ふ、ぁ、ぎ、んとき...」
細腕を俺の肩に回し、縋るようにいとおしむように、後頭部から首筋にかけてをおそるおそる撫でてくれる。
その仕草に俺はたまらなくなり、ソファに小太郎をどさりと押し倒した。
「ん、ん...」
そのままくちづけを続けながら、小太郎の服を脱がしていく。
暖色系の間接照明のみのリビングで、その肌はさらに艶かしく色づいて見える。
「ん...っう、...ン...」
半ば強引に脱がされながら身体を捩らせ、それでも強く抵抗はしない小太郎に、俺はいとおしむようにくちづけを降らせていく。少しずつ露わにされていく身体が、俺の本能をじわじわと煽る。
「ぁ...は...」
甘い息を漏らしながら、服をすっかり脱がされて、小太郎は少し恥らうように顔を背けた。
「やっぱ、おめーの裸、好きだわ...」
素肌をすべて晒した小太郎をまじまじと見つめ、俺は不覚にもごくりと喉を鳴らす。
「...な、何を言う...」
かあと赤くなった顔の脇に手を付いて覆いかぶさり、俺は小太郎の表情を正面から見つめる。瞳に映る俺の表情は、すっかり雄のそれだ。
リビングのソファの上で裸、という、普段ならばありえない状況に、より興奮を覚えてしまう。それは小太郎も同じようで、まだほとんど何もしていないのに、すでに少し息が早い。
「これ、俺のモンだもんね...」
圧し掛かってぎゅうと抱きしめると、子供か貴様は、という声がくぐもって聞こえた。しかし背に回された手は優しく俺を包む。

はぁ、はぁ、
互いの息遣いが、静かなリビングに響く。

小太郎の両脚を膝で割って開かせ、そこに俺の下半身を割り込ませてさらに深く抱きすくめると、
「ぁ...」
やらしい姿勢をとらされたせいか、もうそれだけで甘い声が漏れた。
「もう、感じる...?」
まだ何もしてないよ、と耳元でささやいてやると、小太郎は恥ずかしそうに眉を寄せて目を閉じた。
「...こんなところで、脱がせるな...」
負け惜しみのようにつぶやいたその声がたまらなく可愛くて、俺はついいじめたくなってしまう。
「なに、ここで裸にされたのが恥ずかしいの...?」
晋助が家族の一員となって以来、セックスは寝室でしかしていない。それというのも、他の場所でちょっかいを出すとすぐさまアッパーカットが返ってきて、やれ教育に悪いだの父親としての自覚を持てだのと、長い説教を聞かされるからだ。
こいつの頭の中はほとんど晋助でいっぱいで、俺としては少し、何と言うかその、いじけちゃうんです。
「リビングのソファで、俺に全部脱がされて、裸にされて脚開かされてるから、感じるの...?」
耳元で舐るようにささやくと、ゾクリ、と小太郎の身体が粟立つのが分かった。
「バっ...」
何か罵りの言葉を吐こうとするくちびるを先にキスで塞いで、指先を胸元に這わせながら、俺はさらに続ける。
「もっと感じること、しよっか...?」
指の腹でそっと突起に触れると、
「ぁんっ...」
甘い甘い、痺れるような声が零れた。
「裸にされて、触られて、これからもっと俺にエロいことされるかもしれないから、感じるの...?」
低い声で攻め、再び反論の言葉がくる前にくちびるを塞ぐ。
「ん、ぅ...」
いとしいいとしいそのくちびるを味わってから、俺は押しの言葉を落とす。
「それでそんなに感じてるんなら、すげー嬉しいよ、俺は...」
だって、俺のことそれだけあいしてるってことだろ?
言ってその首筋に顔を埋めると、小太郎は恥ずかしさを隠すようにため息をついて、俺の頭を抱きかかえた。
「まったく、貴様は...」
最近あまり俺に構ってなかったことに気付いたのだろう、言う声は深く優しく、暖かい。
「小太郎、今日は2人きり、だな...」
「...そうだな...」
ため息交じりに応えるその声はひどく艶っぽくて、俺はたまらなく血が滾るのを感じる。
「な、今日...一緒に風呂、入ろうか」
いつもはチビ助にとられてしまう小太郎を、どこまでも独占できるのがアホみたいに嬉しくて、俺は白い首筋に舌を這わせながら問いかける。
「...仕方のない、やつだな...」
ん、ぁ、
這う舌の感触に身体を捩らせ、甘い息を吐きながら、小太郎は困ったように、それでもやわらかく、微笑みを返した。
 



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