忍者ブログ
for mobile,R15/R18
[1] [2] [3] [4] [5] [6]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

※この作品は性描写があります。18歳未満の方はお戻り下さい。
18歳以上の方は自己責任でご閲覧下さい。
PR

※この作品は性描写があります。18歳未満の方はお戻り下さい。
18歳以上の方は自己責任でご閲覧下さい。

「んく、」
突然かけられた夜這いに、気付かないほど疲労していたのかそれともこいつだからなのか、心底不覚に思いながら、ふさがれた口唇を離すように身体を押しやる。
「んンっ」
だけど熱く押し当てられたその口唇は離れるどころか、さらに深く侵入してきて、熱い舌が好き勝手に口内を荒らしていく。どこか甘い味がして、それはいつものことなのだけど、でもその舌がいつもよりやわらかでやさしいのは、なぜ。
「ん、ふ、ぁ」
少し冷えた指にやわやわと絡められるこいつの指は温かく、じわり、じわり、身体に甘い感覚が沁みてきて。
「は、ふ・・・」
身体の奥からゆっくりと滲んでくる熱い息を逃がしながら、
ああ、そうか、
やっとこの夜這いの理由に思い当たる。
「ふ、」
少し笑みを浮かべた俺の口唇に気付いたのだろう、銀時はようやく口唇を少しだけ離して、
「よぉ、ジジイ」
何を言うかと思ったら、憎らしい言葉を吐いてくる。
「何だ、小僧」
そういえば、よくこんなやり取りをしていたと、遠い記憶を辿ってみれば、俺の人生における毎年この日のほとんどが、こいつから始まっていたような気がする。
「おめ、小僧はねェだろ・・・4ヶ月弱の差で」
「貴様こそ、ジジイとは何だ・・・改めろ。そして敬え」
「何で同い年を敬わなきゃなんねぇんだよ、バカ」
「バカじゃない桂だ、なぜ同い年にジジイ呼ばわりされねばならぬ」
恒例のような言い合いをしている間も、絡めてくる指はやわらかく温かく、その声は憎らしいほどに甘くやさしい。
「まぁ、まぁ、いいから」
自分から言い合いを仕掛けてきたくせに、だだっ子を宥めるような声で頭を撫でて、
「ぅん」
再度口唇がふさがれる。
粘膜を触れ合わせたそこから、とろけるような甘さが沁みてきて、その甘さが全身に広がっていくのがわかって、でもこのまま流されるのは少し悔しくて、そのふわふわの髪をくしゃりと掴む。
「こらこら、痛いだろ?」
やはり宥めるような声で、低く穏やかに囁かれ、もぞもぞと少し気まずい気持ちで視線を泳がせていると、
「おとなしく、受け取んなさい」
ゆっくりと甘いくちづけが、首筋に降りていく。
じん、じん、
口唇に触れられたところから、熱い痺れが体内に沈んでいって、甘い感覚が身体の奥から湧き起こってきて、
「ぎんとき、」
その名を呼ぶと、なぜか心まで甘い気持ちに満たされて、
やさしくゆっくりと始まったその贈り物に、しばし身を任せた。 

「オイづら、おきろ。おきろよ」
小声ともにぐいぐいとらんぼうにゆさぶられ、小太郎はむぅとうなりをあげながら目を開けた。
「・・・づらじゃない、かつらだ・・・」
ねぼけた声でもとっさに口をついてでる、いつもの反論。
「いいから、おきろって」
ちいさな手が、小太郎のちいさな肩をさらにゆさぶる。
ねむい目をこすり、くぁ、とねこのようなあくびをして、小太郎は晋助にひっぱられるようにむくりと起き上がった。
「なんだ晋助・・・もう、朝か?」
「ばぁか。いいから、ほら、ついてこい」
寝起きで少しほほの赤い小太郎を布団からひっぱりだし、だれにも見つからぬようにそっと、しかし強引に部屋のそとへ連れ出す。
「晋助・・・?」
「いいから、こいってば」
晋助は小太郎の手をぐいと引いて、廊下へ、玄関へ、そとへ、そして森のほうへとずいずい歩いていく。

「だめだ晋助、森へはあぶないから行ってはならぬといわれているだろう」
「ばぁか、ンな言いつけまもってんのはてめぇぐらいだ。だまってついてこいよ」

晋助は真剣な歩調でもくもくと歩く。はじめは「おい!」だの「まて!」だの声をあげていた小太郎も、いつにない晋助の真摯さにしだいに口をつぐみ、手をひかれるままに歩みを進めた。
まだ幼いふたりにとって、真夜中の森はとても危険だ。晋助は小太郎の手をいっしょうけんめいひいて、小太郎は晋助の手をいっしょうけんめいにぎって、ふたり離れてしまわぬように、互いの手のぬくもりをたよりに歩く。
そんなふたりをみまもるように、こよいの月があかあかと、森の木々のすきまから、道なき道を照らし出す。

肩で息をしながらふたり、かれこれ、30分は歩き通しただろうか。
「ふぐ!」
急に歩みをとめた晋助の背に、小太郎はおもいきりぶつかった。
「なん・・・」
文句を言いかけた小太郎に、晋助が前方をそっとゆびさす。
顔をあげた小太郎の目の前にひろがるもの、それは。

「・・・うわぁ・・・!」

森のちいさな広場の中に、一面に咲きほこる、青くちいさなツユクサの花々。
夜露にたくさん月を浴び、木立にそっと守られながら、淡くゆめゆめしいひかりを放っている。

「すげえだろ・・・?」
おおきな瞳をさらに見開いてその景色に見入る小太郎に、晋助の顔がほころぶ。小太郎はすいこまれるように広場の中央へ歩みよった。

夜露をしっとりとまとい、月明かりに照らされて、ちいさくも凛とした青き花々、そのすらりと伸びる葉。
「すごい、な・・・」
小太郎のちいさくぽってりとしたくちびるが、すなおに感動をつむぐ。
「・・・だろ?」
小太郎の横顔と、大きくひかりを放つ満月、きよらかに咲く青い花。
交互に視線をめぐらせて、晋助は少し照れたようにうつむいた。

「おまえ、きょう、たんじょうびだから」

ぼそりと落とされた晋助のことばに、一瞬きょとんとした顔をして、それからすこしおどろいた顔をして、小太郎がふりかえる。

「それで、ここに・・・?」
「・・・・・・・・・まぁ、な」
「・・・晋助」
「・・・・・・あンだよ」
「ありがとう」

すなおにもたらされた礼のことばに、晋助は照れを隠すように背を向ける。
「・・・またひとつ、おれをおいていきやがって」
「え?」
何のことか分からないという表情で、小太郎が晋助の背を見つめる。
「・・・またひとつ、年が、はなれた」
晋助は聞きとれないくらいの声で、ぶっきらぼうにつぶやく。
「・・・・・・ああ・・・」
小太郎はすこしだけおどろいた顔をしたあと、合点がいったようにうなずき、次に怒ったように眉をきゅっとよせた。
「何をいっている。おれはおまえをおいていってなどいない」
とてもまじめな口調で、りんとしたまなざしで、小太郎がまっすぐに言う。
晋助はそのことばを背で聞いて、でも内心とてもうれしくて、顔がかあと赤くなる。
「だいたい、おまえのたんじょうびがくればまた、元の差にもどるだろう」
「・・・うるせぇ、ばぁか」
消え入りそうな声で、でもどこかほっとしたように、晋助がつぶやく。
「しんすけ」
「・・・ァんだよ」
「ここにつれてきてくれて、ありがとう」
「・・・・・・あぁ・・・」
ほほを赤くしたまま、晋助は小太郎のほうにむきなおった。
 
「・・・ここは、ひみつなんだ」
やはり小声でぶっきらぼうに、でも小太郎にはちゃんと聞こえる大きさで、たどたどしくことばをつむぐ。
「うん」
晋助の真剣な様子に、小太郎も神妙な面持ちでうなずく。

「・・・おまえだけにおしえた。とくべつだ」
「うん」
「おまえと、おれの、ひみつだ」
「うん」
「ほかのやつに、おしえんな」
「うん」
「じゃあ、ゆびきりしろ」
「うん」

幼いゆびとゆびが、きゅっとかたく結びついて、ゆびきり、げんまん。
ふたりだけの、ひみつのばしょ、ひみつのきおく。

「わすれんなよ」
「ああ、わすれない」
「ぜったい、わすれんなよ」
「わすれるものか、おまえこそ、わすれるなよ」
ふたりかわしたこのやくそくを、このひのきおくを。

花は、ずっと咲いているものではないから。この景色は、いつまでも続くものではないから。この時間は、いつまでも、続くものではないから。
大きく光る満月の下、二人の無垢な仔供は、結んだ小指を離さないまま、その光景を、過ごした時間を、心に深く刻み付けた。


いつかふたりがはなればなれになっても、いっしょにすごした時間を、わすれてしまわないように。

「おはよう晋助、そろそろ学校へ行く時間だろう?制服はどうした」
昨夜さんざん抱かれたせいでいつもより起きるのが遅れた小太郎が、リビングへ入ってきて開口一番、愛しい伴侶の俺より先に私服姿の息子に声をかける。
甘くカッコイイ祝いの言葉を用意していた俺が立場をなくして突っ立っているその脇をすり抜けて、晋助はまだパジャマ姿の小太郎にがっしと抱きついた。
「こたろー、お誕生日おめでとう!今日は一日ずっといっしょにいてやるからな!」
「あっバカ!俺より先に言うなコノヤロー!」
「子供に向かってバカとは何だ銀時!晋助、ありがとう。気持ちは嬉しいがな、学校には行っておいで」
俺に鋭く言葉を放ってから、晋助の頭を優しく撫でる小太郎。晋助はますます嬉しそうな顔で小太郎に抱きつく。チクショー、でも銀さんはあんなことやこんなことを小太郎としてるんだもんね、と昨夜のことを負け惜しみのように思い出してから、俺は自分に注意を向けるべく咳払いをひとつ。
「小太郎、いいんだよ。晋助はもう休む連絡はしてある。今日は俺も仕事を入れてない。つまりだな、俺達からのプレゼント、今日一日家族団欒だ。固いこと言わずに、受け取ってくれや」
そう、小太郎の望む一番のプレゼント、それは家族3人でいっしょに時間を過ごすこと。
この春から中学に進学し帰りも遅くなってきた晋助、探偵という自由業ゆえに生活が不規則な俺。俺の仕事を補佐する小太郎も、俺とは違う動きをするから、一緒にいられる時間はそうはない。家族で過ごす時間がほとんどないことを、小太郎は内心悲しく思っていたに違いないのだ。
俺の言葉に最初は戸惑った顔をした小太郎だったが、俺と晋助の顔が大マジなのを見て、困ったように小さくため息、それでも頬が少し赤らんでいる。付き合いの長い俺には、小太郎がものすごく嬉しがっているということが手に取るように分かった。
「誕生日おめでとう、小太郎」
ベッドの中で何度も甘くささやいた言葉を、朝日の下でもう一度贈る。小太郎はしかめっ面をやわらげ、はにかみながらゆっくりと笑った。
「ありがとう、銀時、晋助」
その笑顔はとても幸せそうで、俺は心から嬉しくなる。
この3人の中で、唯一まともな家族をもったことがあるのは小太郎だけだ。そのせいか、小太郎は俺達に家族の暖かさ、優しさを与えようとどこか必死なところがある。こいつはいつだって、俺達が幸せな家族であることを、心から望んでいるんだ。
俺は小太郎の愛しい笑顔を見つめながら、何度となく迎えてきたこいつの誕生日と、これまで共に過ごしてきた長い長い時を想った。


俺と小太郎の始まりは、それこそ物心ついた頃からだ。
俺の一番古い記憶は、孤児院の片隅でうずくまっている俺に手を差し伸べる小太郎の姿。
ああ、俺はこいつとならば生きていけるかもしれないと、幼い心で強く感じたのを覚えている。

俺と小太郎は、同じ孤児院で育った。俺は捨て子だったが、あいつの両親は事故死だったらしい。
孤児院での辛い日々の中、お互いだけが、世界の全てだった。幼い頃2人で過ごした濃密な時間は、今の俺達を形作っていると言っても過言ではないだろう。
だが、11の春。別れはあっさりとやってきた。
小太郎は養子を求めて来たとある老夫婦に気に入られ、そのまま引き取られていってしまった。あいつは俺を置いて行くことなどできないと最後まで泣きじゃくっていたが、所詮は非力な仔供。そうすることが小太郎のためだと言って、大人達は俺達を勝手に引き裂いていった。俺はこの世が破滅するほどの絶望的な気持ちで、大人に手をひかれながら何度も何度も振り返る小太郎を見送った。

それからの数年間、俺は孤児院、小太郎は遠く離れた地で幸せな家族を。どこか遠慮しながらも、暖かい老夫婦との暮らしはそれなりに幸せだったのだろう。あいつは俺のことだけがずっと気がかりだったらしい。
そして、13の冬。
ある事情から2年ぶりに再会した俺達は、その夜に初めて身体を重ねた。震える小太郎をなだめつすかしつ、まあほとんど強姦みたいなものだったんだろう。2年前と比べて随分マセた俺の豹変振りに怯えつつも、最終的にあいつは、俺を受け入れてくれた。
それから小太郎は月に1回、どんな無茶をしてでも必ず俺のもとへ帰ってきた。あいつがいない間にすっかり荒んでいた俺を、決して見捨てないというように。
正直、あいつが戻ってきていなかったら、俺はお天道様の下では生きていられなかっただろう。小太郎を失ってからすっかり心を閉ざしていた俺は、この世の裏で生きる連中との付き合いを覚え、犯罪の下請け的なことをやっては小遣いを稼いでいたんだ。道を外しかけた俺を救ったのは、あいつだった。

15の冬。小太郎の養父母が、相次いで亡くなった。
もともと祖父母と言っていいような年齢の夫婦だったが、ようやく手に入れた家族をたった4年で失った小太郎の傷は大きかっただろう。だがあいつは気丈に振舞い、通夜も葬儀も立派に済ませ、人前では一粒も涙を見せなかった。
全てが終わった後、空っぽになった古い家屋の、部屋の隅で、静かに佇むあいつは今にも消えてしまいそうに見えた。
俺は、俺が小太郎を救えるのは今しかない、と思った。俺はいつも小太郎に救われてばかりだった。今度は俺が、こいつを救う番だと思った。
「泣けよ」
俺はあいつに言った。
「俺がお前の、家族になる。俺がお前を、全力で守る。絶対にもう、悲しい思いはさせないから、今だけは、泣け」
滅茶苦茶だが、今思えばそれが俺の、プロポーズだった。

年が明けて、15の春。義務教育を終えた俺は、孤児院を出、小太郎と2人で暮らし始めた。
小太郎は養父母の遺産と奨学金で高校へ進学。自分も働くと言って聞かなかったが、勉強の出来た小太郎の進学は養父母の願いでもあったから、最後は俺の説得もあって進学を選んだ。
あいつが高校へ通う一方、俺は自分のツテを使って仕事を始めた。法に触れるようなことは小太郎が悲しむからしなかったが、すれすれのことは結構やっていたと思う。15の若造が生きていくには、世間は生易しいものではなかったのだ。

18の春、小太郎が高校を卒業すると同時に、俺たちは探偵事務所を開いた。
その頃はまだ2人とも未成年だから、仕事を取ってくるのも一苦労。俺のツテから少しずつ仕事を流してもらい、何とか2人でやってきた。小太郎を変装させては調査先へ忍び込ませる、なんてことも何度あったか知れない。その度に俺は、こいつを危険な目に合わせる自分を嫌悪したものだった。
そうしてがむしゃらに働いて、仕事がどうにか軌道に乗ってきたある日。俺たちの耳に、孤児院がなくなるという噂が入った。
俺にとってあの場所は忌まわしい記憶のほうが多かったが、律儀な小太郎は一人でなくなる寸前の孤児院を訪れたらしい。
そして連れ帰ってきたのが、当時8歳になったばかりの晋助だった。
「今日から、俺たちの子だ」
そううれしそうに言う小太郎。家族のかたちは、こうしてできあがった。

「こたろー、お誕生日ありがとう」
「バーカ、テメーがお礼言ってどうすんだよ。おめでとうだろ」
「うるせぇ、いいんだよ。こたろがこの世界にいてくれて、おれは本当にうれしいんだ。ありがとう、こたろ」
小太郎に纏わり付いて離れない晋助と、小太郎の、幸福そうな笑顔。俺はやれやれと思いながら、晋助ごと小太郎を抱きしめてやる。
「俺も。ありがとう、小太郎」
耳元でそう囁く。少し頬を朱に染めて、小太郎は心からの笑みを俺に返した。



忍者ブログ [PR]
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
バーコード